口腔機能発達不全症

口腔機能発達不全症とは、口腔(口の中)の機能が正常に発達しない状態を指します。
具体的には、噛む、飲み込む、話すといった基本的な口腔の働きが十分に機能していない場合に診断されることがあります。
この状態は、成長期の子どもに多く見られますが、大人になってからも影響が残ることがあります。
近年、食生活や生活習慣の変化にともない、この問題が増加しているとされています。
正常な口腔機能は、健康な歯並びや顎の発達だけでなく、全身の健康にも深く関わる重要な要素です。
そのため、早期に気づき、適切な対応を取ることが非常に重要です。
口腔機能発達不全症の原因

口腔機能発達不全症にはさまざまな原因が考えられます。以下は主な要因です。
食生活の変化
現代では柔らかい食べ物が多くなり、噛む回数が減少しています。
このような食生活は、顎の発達に影響を及ぼし、歯並びや噛む力の低下を招くことがあります。
不適切な姿勢
スマートフォンやタブレットを使用する時間が増えたことで、姿勢が悪くなる子どもが増えています。
猫背や首を前に突き出した姿勢は、顎や口周りの筋肉に負担をかけ、口腔機能の発達を妨げることがあります。
口呼吸
アレルギー性鼻炎や風邪などで鼻呼吸が難しい場合、口呼吸が習慣化することがあります。
口呼吸は舌の位置や顎の発達に悪影響を及ぼし、口腔機能不全につながる可能性があります。
舌や唇の使い方
舌や唇の筋肉が十分に発達していない場合、正しい飲み込み方や発音が難しくなることがあります。
また、指しゃぶりなどの癖も問題を引き起こす要因となることがあります。
症状と影響

口腔機能発達不全症は、さまざまな症状や影響を引き起こします。
以下はその一例です。
噛む力の低下
噛む力が弱いと、食べ物を十分に咀嚼できず、消化不良や栄養吸収の低下を招く可能性があります。
また、食事そのものがストレスになり、食欲不振につながることもあります。
発音の問題
舌や唇の動きが制限されると、一部の音を正確に発音することが難しくなる場合があります。
このため、言葉の発達にも影響を及ぼすことがあります。
歯並びや顎の異常
噛む回数が少ないと顎が十分に発達せず、結果として歯並びが悪くなることがあります。
また、不正咬合(上下の歯が正しく噛み合わない状態)になるリスクも高まります。
全身への影響
口腔機能は全身の健康とも密接に関わっています。
例えば、噛む力が弱いと脳への刺激が減少し、集中力や記憶力に影響を与える可能性があります。
また、不適切な呼吸法は睡眠障害や疲労感を引き起こすこともあります。
診断と治療
口腔機能発達不全症は専門的な診察によって診断されます。
歯科医師や矯正歯科医師が、患者さまの口腔内や顎、舌の動きなどを詳しくチェックし、問題を特定します。
治療方法
治療は患者さまの状態や年齢に応じて異なります。
以下は一般的な治療方法です。
咀嚼訓練
噛む力を鍛えるためのトレーニングを行います。
例えば、硬い食べ物を積極的に取り入れることで顎の筋肉を鍛えます。
舌や唇のトレーニング
舌や唇の筋肉を強化するための運動を指導します。
これにより正しい飲み込み方や発音ができるようになります。
矯正治療
歯並びや顎の形状に問題がある場合には矯正治療が行われることがあります。
早期に治療を開始することで、将来的な問題を予防できます。
生活習慣の改善
姿勢や呼吸法などの日常生活での習慣を見直すことで、口腔機能を改善することも重要です。
予防と対策

口腔機能発達不全症を予防するには、日常生活でいくつかのポイントに注意することが大切です。
正しい食生活
硬い食べ物をバランスよく取り入れることで、顎や歯の発達を促します。
また、食事中はよく噛むことを意識することも重要です。
姿勢への配慮
子どもの頃から正しい姿勢を保つ習慣をつけることで、顎や周囲の筋肉への負担を軽減できます。
特に食事中や勉強中は姿勢に注意しましょう。
鼻呼吸の習慣化
鼻呼吸を習慣づけることで、舌や唇の正しい位置を保つことができます。
アレルギー性鼻炎などで鼻呼吸が難しい場合には、耳鼻科で適切な治療を受けることも検討してください。
定期的な歯科検診
早期発見・早期治療が重要ですので、小さい頃から定期的に歯科検診を受けることをおすすめします。
専門家によるアドバイスを受けることで、大きな問題になる前に対処できます。
口腔機能発達不全症は放置すると成長や健康にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
しかし、適切な予防と治療によって改善できるケースがほとんどです。
当院では、お子さま一人ひとりに合わせた診察とサポートを行っています。
お子さまのお口の健康について少しでも気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
一緒に健やかな成長をサポートしていきましょう。